2026年度夏ターム開催レポート
TAQUMI開催について
2026年8月24日から9月11日までの約3週間にわたり、ポスト5G時代を支える量子×アプリ実装の 匠 を育成する『高度量子人材育成プログラム TAQUMI』を開催しました。プログラムの前半(第1回〜第10回)はオンライン形式で実施し、量子コンピューティングの必須知識から数理最適化、Webアプリケーション開発、クラウド(AWS)活用まで、幅広い技術スタックを体系的に学習しました。
後半(第11回〜第15回)は対面形式によるハッカソンを実施し、学んだ技術をWEBアプリケーションとして形にし、最終日には成果報告会と表彰式を実施しました。表彰チームの選定は僅差の接戦となりましたが、厳正なる審査の結果、以下の3賞が3チームへ授与されました。
- TAQUMI賞(最優秀賞)・・・総合的に最も優れた成果をおさめたチーム
- Quantum Challenge賞・・・総合的に最も優れた成果をおさめたチーム
- Quantum Engineering賞・・・量子アプリケーションの実装技術力に秀でたチーム
オンライン講義の様子
オンライン講義では、最先端の量子業界動向から数理最適化、量子アニーリング/量子インスパイアード、QAOA、組合せ最適化演習、ブラックボックス最適化(FMQA)、Webアプリケーション開発、テスト駆動開発、AWS基礎、クラウド構築までを体系的に学習しました。講師陣は産総研、デロイト トーマツ、Fixstars Amplify、IBM、慶應義塾大学、Quanmaticの第一線の専門家が務めました。
各回は、最新動向や理論を習得する講義パートと、ハンズオン形式のコーディング演習パートで構成され、体系的かつ論理的に知識を習得したうえで、実際に手を動かしながら理解を深める内容で進められました。
講義中は受講生から講師へ自発的な質問が飛び交い、その場で疑問を解消しながら、後半のハッカソンに臨むための実装力を着実に身に着けました。
ハッカソンの様子
プログラムの集大成として、早稲田大学40号館にて対面形式のハッカソンを実施しました。『実社会における最適化問題を、量子計算技術を活用して解決』をテーマとし、5チームが5日間にわたりチーム開発に取り組みました。テーマ選定においては、「量子計算技術を何に・どこに活用すべきか」という問いからスタートし、量子技術が真に価値を発揮できる実社会の課題は何かを議論しながら、試行錯誤を重ねました。そのアイデアを形にするために、課題の定式化や目的関数・制約条件の設計、利用する量子計算技術の選定、さらには期待する効果を十分に引き出せるかの検証など、多くの壁を乗り越えながら設計・開発を進め、D-Wave、IBM Quantum、Fixstars Amplify、ABCI-Qといった量子計算技術を活用し、Webアプリケーションとして実装しました。
成果発表会では、どのチームからも独創的で完成度の高いWEBアプリケーションのデモが実演され、その発想力と実装力の高さに審査員からは賞賛の声が寄せられました。
チーム開発









成果発表会・表彰式






審査員紹介
審査委員長:
戸川 望 先生 早稲田大学 理工学術院 教授
審査員:
田中 宗 先生 慶應義塾大学 理工学部物理情報工学科 教授
加藤 宏明 様 国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 (NEDO) AI・ロボット部 量子ユニット 利用促進チーム長
田村 亮 様 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 マテリアル基盤研究センター グループリーダー
松嶋 信吾 様 D-Wave Japan株式会社 日本代表/Country Manager, Japan
チーム別成果紹介
【重要】掲載している各チームの成果物の著作権およびその他の知的財産権は各制作者に帰属し、制作者の許諾を得て掲載しています。法令で認められる場合を除き、掲載内容の全部または一部について、権利者の許諾のない転載・複製・転用は固くお断りいたします。
チーム名:Qampus.<Quantum Engineering賞>
Qampus.
― 大変な履修計画に終止符を。大学生のための履修計画策定最適化アプリケーション
大学生の履修計画づくりを卒業まで一括で作成できるアプリケーション。卒業要件や前提科目、学期ごとの履修上限に加え、全休希望や校舎間の移動時間までを制約条件として考慮し、8学期分の時間割を一括で最適化する。膨大な履修パターンの中から条件を満たす組み合わせを高速に探索する。

チーム名:KAZUKO<Quantum Challenge賞>
安倍姓名(あべのせいめい)
― 後悔しない名付けの実現へ。希望に合った名前の候補を提案する命名アプリ
「こんな名前にしたい」という親の願いを入力するだけで、量子最適化が漢字の膨大な組み合わせから”名前らしさ”と希望条件を両立する候補を提案する。発展的な活用シーンとして、会社名を検討している起業家や、お坊さん(出家名、戒名)、芸名を検討している人等、”名づけ”全般への展開も。


チーム名:ヤキザカナ
ヤキザカナ
― 量子×AIで、人と組織の可能性を最大限に。AIトークン利用の最適化アプリ
開発タスクごとに最適なAIモデルを自動選定するWebアプリ。タスクの難易度、機密情報の取り扱い、コスト、品質を総合的に考慮し、AI活用の効果を最大化。量子インスパイアード最適化技術により、「品質・コスト・セキュリティ」のバランスが取れたAI活用を実現し、開発チームの生産性向上を支援。

チーム名:QUBOring<TAQUMI賞(最優秀賞)>
QUBOring~まだ知らない自分をみつける~
― 自分の知らない自分の好みを発見する、スキマ時間の活動提案アプリ
スキマ時間の活動提案を組合せ最適化問題として解くアプリ。空いた時間に何をするか考えているうちに、時間だけが過ぎていく。新しいことに挑戦したいけれど、自分に合うか不安。そんな「いつもと同じ日々」を、自分の「好き」を発見する時間に変える。学習した好みと「まだ試していない度合い」の両方を踏まえて最適な組み合わせを求め、提案文として提示。使うほど提案が磨かれ、自分の知らない好みの発見につながる。


チーム名:ふくたまペッパーズ
まいにち献立サンプラー
― 「今日何作ろう?」から料理担当者を解放する。献立・買出し最適化アプリ
栄養・食費・フードロスをまとめて考えながら、1週間の献立と買い物計画を自動で組み立てるWebアプリ。予算・在庫・買い物可能日といった制約を満たしつつ、満足度と栄養バランスを高め、費用と食品ロスを抑えるように最適化して提案。

ネットワーキングの様子
ハッカソン終了後には、ネットワーキングを開催しました。チーム開発中には、お互いの仕事や、学業や、プライベートについて雑談をする間もないほど開発に集中していた受講生が、チームを越えてリラックスした雰囲気で語り合いました。また、プログラムに特に積極的に取り組んだ受講生へQuanmatic社より賞が授与され、MVPに松邨さん、玉井さんが選出されました。
量子計算技術の社会実装を牽引するリーダーとして一歩を踏み出した修了生の皆さんにとって、本プログラムを通じて培ったスキルセットや人的ネットワークが、近い将来の挑戦を支える大きな力となることを願っています。






受講後アンケート
対面ハッカソンの満足度を教えてください。
TAQUMIを友人や同僚に推薦したいですか?
対面ハッカソンを通じて、技術的理解は深まりましたか?
受講生の声
オンライン講義
最先端の量子計算技術を学習
・量子コンピュータへの実装に関心があり今回の講義を受講したため、まさに求めていた講義内容であった。
・ブラックボックス最適化は、従前より興味はあったが理論が分かっていなかったので、今回学習できてよかった。
・FMQAの手法と実利用について研究者から直接学べた。
量子アプリケーション実装知識を習得
・StreamlitでのWebアプリ開発とAWS利用を初めて体験し、満足度が高かった。
・量子コンピューティングはその名前だけ聴くととても難しそうで敷居が高く感じていましたが、AWS BraketやAmplify SDK等のサービスによって実装はシンプルに実現できることを知ることができたため、受講前に比べて活用イメージを少し持つことができました。
業務に直結する知識を習得
・数理最適化は、自分が普段担当している物流・配送計画の業務に近く、実際の業務への活用をイメージしながら受講できた。
・量子アニーリングやゲート方式など、同じ量子技術でも仕組みや得意とする問題が異なるということへの理解が深まった。量子技術を活用するには、個々のアルゴリズムだけでなく問題設定から実行基盤までの全体像を捉える必要があると気づいた。
体系的・インタラクティブな講義形態
・体系的な説明や、あらかじめ気になると想定されるところの回答を簡潔に述べてくれる講義の進め方が自分に合っていて、理解がしやすかった。
・技術やスキルだけでなく講義に取り組む姿勢なども学ぶことができた。また、数理最適化の考え方や問題への取り組み方、知らないことの方が多く、学ぶことが大変でしたが丁寧な説明のもと理解することができた。
対面ハッカソン
テーマ選定・社会実装
・思いもよらないようなテーマ設定をしているチームが多く、量子コンピュータのユースケースの幅広さを再認識することができました
・斬新なテーマ設定を行なっているチームが多く、刺激を受けた。今回のハッカソンのみならず、量子技術の応用先・ユースケースの探索にはアイデア力が重要であると考えており、アイデア力が少しついたような気がします。
量子計算技術への理解の向上
・メンバーと議論する中でFMQAの理解が深まった。また、他チームの発表を聞く中でも、発想や定式化の部分でかなり勉強になった。
・量子コンピュータが活用できそうな実問題に対して、自ら問題設定をし、定式化、アプリケーションまで実装までできた。また古典ソルバ(Gurobi)とも比較しながら開発ができた。
チーム開発経験
・他のチームの進め方が見えて、チーム開発の奥深さを学びました。コミュニケーション方法が全然違い、勉強になりました。
・昼休みなどで他メンバーとの交流でモチベーションの高さに触れることができ、益々研鑽を積んでいこうと思いなおした。
・チーム開発の経験がなかったので、チームでのアプリケーションにおける流れやgithubの使い方に関する理解が深まった。
運営・支援体制
・課題設定で行き詰まっている時に、TAの方のコメント・励ましが障壁を乗り越えるきっかけとなりました。
・他のチームの方の発表を見て、どのように成果をまとめればよいのか、どのような流れで開発を進めれば良いのか参考になりました。
実装力・開発力の向上
・量子技術でできることとできないことの境界が分かるようになった。また、成果物の見せ方、伝え方も参考になった。テスト駆動でアジャイル開発を行うことの大切さを感じた。
・量子技術の現状とその使い方はもちろん、生成AIを用いた実践的かつ短期間の開発に関する手法についても理解が深まった。
ハッカソンで期待通りだったことは?
・チーム開発経験
・学んだ知識の実践
・社会課題解決への取り組み、テーマ選定
・アイデア創出・議論
・問題の定式化・モデリング
・設計・構築・実装
・技術習得・スキル向上
・成果物作成
・対面ならではの体験
